北陸新幹線大阪延伸 いつになるのか混迷深まる 政治に翻弄されることなく冷静に協議を進めてほしい
▼2025年7月20日に行われた参議院選挙の結果、京都選挙区ではすでに決まっていた「小浜・京都ルート」ではなく「米原ルート」の再検討を訴える維新候補がトップ当選しました。
▼これに対して、大阪府の吉村知事は7月22日に「米原ルート」についても費用対効果を比較検討すべきとの見解を示しました。(2025.7.22 NHK 関西 NEWS WEB)
▼7月23日には、JR西日本の倉坂社長が就任後初めての定例記者会見で、北陸新幹線の「米原ルート」の再検討を求める声に対して、乗客の利便性を考えれば京都駅周辺を通るルートが望ましいと改めて見解を述べました。(2025.7.23 YTV)
▼今回の選挙結果によって、北陸新幹線の大阪延伸問題が一層混迷を深めることとなりました。

▼これまで大阪延伸のために検討されたルートは、米原ルート、小浜・京都ルート、舞鶴(小浜舞鶴京都)ルート、小浜ルート、湖西ルートと大きく5案があります。
▼5ルートについては、それぞれ長所短所があり、どの案が最適かということはなかなかいうことが難しいものとなっています。
▼こうした中、2017年3月、北陸新幹線敦賀・大阪間整備検討委員会からの最終報告を受け、与党整備新幹線建設推進PTでは「小浜京都ルート」を採用し、京都から大阪までは京田辺市松井山手付近を通って新大阪に至るルートを決定しました。
▼この決定が曲者で、与党整備新幹線建設推進PTは法的根拠は何もありません。法的根拠のないPTが決定しても政府として何も決定しているわけではないのです。
▼このPTの運営方法にも問題があり、反対する者を委員は委員にしない、批判は一切受け付けないといった参議院議員である座長の独善的な進め方が批判の的になっています。
▼また、整備検討委員会からは京都駅周辺のルートについて、東西案、南北案、桂川案の3案が示されました。

▼これに対し、京都市議会では市内地下深くにトンネルを建設する案について、地下水への影響などから反対する決議案が日本維新の会、国民民主党、共産党などの賛成多数で可決されました。(2025.6.6. NHK NEWS WEB)
▼これに先立ち2024年12月に開催された与党の整備委員会では、松井京都市長、西脇京都府知事の両者が「小浜京都ルート」に対する懸念を表明しています。
▼松井京都市長は、2024年12月の定例記者会見で地下水への影響、建設残土処分、工事による交通渋滞、地元の財政負担という4つの懸念をあげています。(2024.12.17 Merkmal)
▼「小浜京都ルート」地下水への影響、オーバーツーリズムなど京都市内の反対や地元自治体の首長の懸念、さらに今回の参議院選挙結果によりますます難度を上げています。
▼ここで、京都市内で建設工事が伴わない米原ルート、小浜ルート、湖西ルートの再考を求める動きがふたたび出てきました。
▼しかし、米原ルートについては東海道新幹線との接続に難があり、小浜ルートでは需要が各ルートの中で最小であり、湖西ルートでは東海道新幹線との接続問題や既存の湖西線の処遇問題などが生じます。
▼米原ルートについては、そのうちリニア新幹線が大阪へ延伸すれば、東海道新幹線のダイヤに余裕ができるので乗り入れについて検討の余地が出てくるかもしれません。

▼いずれにしても、普通に延伸工事を進めていくとしても、工期は15年かかると考えられています。さらに今回の京都での反対や懸念により、北陸新幹線が大阪にやって来るのはいつになるのやら。
▼北陸地域や敦賀以西の利用者にとっては、はやく延伸が進むことを望んでいますが、あちらを立てればこちらが立たずで、なかなか解決のめどは見つかりそうにありません。
▼一部の政治家に翻弄される決定方法ではなく、すべての利害関係者が合意を得る方向で、しかも法的な根拠のある協議体での議論が望ましいのではないでしょうか。(2025.7.25)