新型一般車両、観光列車、新ビスタカーの導入。近鉄グループ長期ビジョン2035・中期経営計画2028の策定
▼近鉄グループホールディングスは、「近鉄グループ長期ビジョン2035・中期経営計画2028」を3月25日に発表しました。
▼これは、超長期的に近鉄グループが目指す方向性を明示したうえで、10年後にありたい姿を取りまとめた「長期ビジョン2025」を策定し、将来の目標から逆算して中長期的な目標・施策を設定した「中期経営計画2028」を定めたものです。
▼その中で、鉄道事業に関して、長期ビジョンでは、「魅力あふれる沿線を創出し、選ばれ親しまれる近鉄~安全・快適なサービスを提供し、輝く地域とともに~」を謳っています。
▼さらに「中期経営計画」の主な中期戦略として、①安全輸送を大前提とした効率的な事業体制の強化、②沿線活性化と需要喚起の取組みによる収入の拡大を図るとしています。
▼具体的に、①安全輸送を大前提とした効率的な事業体制の強化では、大規模災害に対する対策として、高架橋・法面・トンネル等における安全対策の継続実施、各種設備の更新による省力化・省人化の徹底として、2025から2028年度まで60~80億円程度の投資を実施するとしています。
▼DX、ITによる業務効率化として、省力効果のある駅巡回対応や主要路線も含めたワンマン運転化の拡大、保線検査業務システム化等を図るとしています。
▼省エネ効果の高い新型一般車両の導入の拡大として、2025~2028年度に150両程度の導入を予定。使用電力量の45%減、使用総電力量を年間3~4%減を図るとしています。

▼更なる収支改善への取組みとして、ダイヤ見直しによる運営コストの削減、支線エリアにおける賑わい創出に向けた地域と連携した施策の推進を図るとしています。
▼②沿線活性化と需要喚起の取組みによる収入の拡大では、名阪特急増発、最終電車の繰り下げなど需要に応じたサービスの強化、大阪・関西万博や伊勢神宮式年遷宮等沿線での大規模イベント等を取り込んだ営業施策の実施、QRデジタルきっぷ、クレカ等タッチ決済サービスなどの拡充を図るとしています。
▼さらに、沿線地域の観光資源等の掘り起こしや魅力発信の強化、沿線活性化に向けたグループ各社・沿線自治体等との連携施策の推進、インバウンドや沿線外からの奈良大和路、伊勢志摩への誘客強化と周遊拡大、夢洲直通列車、新型観光列車、ビスタカー更新等による新たな魅力発信と近鉄ファンの創出を図るとしています。
▼主な取り組みで示されたもののうち、興味深いものの1つは、2025~2028年度に新型一般車両を150両程度導入するとしていることです。
▼2024年度に新型一般車両の8A系が導入されましたが、今後の一般車両が新型に順次置き換わることが示されました。

▼近鉄の一般車両はシリーズ21が導入されてから約四半世紀も更新がなく、一般車両は1400両余りあると言われ、老朽化が進んで更新が必要な車両が450両以上あると言われています。
▼中期経営計画に載ったことで、更新が今後進んでいくと思われ、新型車両の導入が楽しみになります。
▼もう1つは、夢洲直通列車、新型観光列車、ビスタカー更新が示されたことです。

▼大阪・関西万博の会場にある夢洲へは、近鉄けいはんな線が大阪メトロと相互乗り入れを行っており、万博終了後の跡地での国際観光拠点やIRの開発を見据えて、生駒駅で奈良線からけいはんな線へ直通乗り入れを行う研究が行われており、実現すれば奈良などから特急が運転されるかもしれません。

▼ただ、大阪メトロ、けいはんな線は第三軌条方式なので、奈良線と直通運転をするにはこの集電方式をどのように解決するのかが課題となっています。
▼近鉄では、これまで、観光列車として、「しまかぜ」「青の交響曲」「あをによし」が導入されて、インバウンドや国内の新たなニーズを創出してきましたが、今後も新たな観光列車が導入されるとのこと。これも楽しみです。

▼名阪特急は、「ひのとり」が新造されましたが、汎用型の特急車両の新造は2009年の22600系Aceの導入以来ありません。ビスタカーは1978年にビスタカー3世が導入されて、もう50年近くになります。新ビスタカーの登場は遅いくらいです。これも楽しみです。
▼今回は近鉄グループの長期ビジョン及び中期経営計画において、鉄道事業がどのように示されているかを見てきましたが、新型一般車両、新しい観光列車、新ビスタカーの導入が謳われており、今後の近鉄の動きが楽しみではあります。(2025.3.26)